農薬・化学肥料

農薬とは? 化学肥料とは?
 農薬・化学肥料と併記する事が多くありますが、ご存知の通り、全く別のものです。

 直接的に身体に影響を与えるのは農薬の方で、化学肥料自体は人体への害はありません。しかし、化学肥料で植物を栽培すると、土壌中の微生物が食料不足にり、衰弱してしまいます。微生物も生物ですから、有機性の食料がないと生きることはできません。微生物が途絶えると、土はただの無機質な物質になって次第に硬くなっていきます。
硬い土→植物の根は充分に伸びない→貧弱な根は養分を吸収しない→育ちが悪くなる→強い化学肥料の多肥→土はさらに硬くなる→さらに貧弱な根→収穫が落ちる
 つまり、化学肥料は人間にとっては直接には悪さをしないのですが、土を殺してしまうという悪さをします。


 農薬には3種類あります。殺虫剤と殺菌剤と枯草剤です。殺虫剤と殺菌剤は40年前とは比較にならないほど強くなって、今や文字通りの「毒薬」になっています。枯草剤の怖さはベトナム戦争で既に証明済みです。
 殺虫剤は作物の葉や果実に散布します。
 殺菌剤は病菌退治に使うので、作物の葉や果実にも散布しますが、土の中に蔓延している病菌退治に土にも散布します。根菜はこの影響を受けています。
 殺虫剤も殺菌剤も雨や潅水で洗い流されないように、接着性の強い化学薬品が含まれています。野菜をちょっと洗っただけで除去できるような代物ではありません。

農薬と化学肥料の関係・・・
 化学肥料で栽培すると土が硬くなって、根が伸びなくなり、栄養分が吸収し難くなります。ちょうど、胃腸が弱った人が病弱になるのと同じで、野菜も病弱になります。健康体なら多少の病原菌など、寄せ付けないのですが、病弱になると、あっけなく罹病してしまいます。これは人間も植物も一緒です。

 ですから、病弱→罹病→病原菌退治→殺菌剤の図式が出来あがります。
 殺菌剤は病原菌も殺しますが、同時に野菜の為に役立つ微生物も殺してしまいます。つまり、畑を無菌室にしてしまうのです。無菌室で育ったマウスが菌に対する耐性がないように野菜も菌への耐性がなくなります。一方、菌の方は殺菌剤に対する耐性を強めます。

耐性がない→罹病→殺菌→耐性菌→罹病→殺菌→耐性菌・・・

 病気に罹りやすいだけでなく、病弱だと、光合成の力も落ちてきます。光合成の力が弱まると、糖分の製造能力が落ちて、葉や果実は健康を損ないます。(化肥野菜が美味くないのはこの為です)

 虫は健康を損なった野菜が好きです。というのも、虫は動物のように消化器官を持っていませんから、どちらかというと腐りかけた野菜しか消化出来ないからです。
 不健康な野菜には当然、虫が集まってきます。そこで殺虫剤です。虫は菌と同様に自分を攻撃してくる敵に対抗するため、耐性を強める自然の力を持っています。(淘汰の原理です)

耐性→強い薬品→強い耐性→更に強い薬品→更に強い耐性・・・

 薬品は遂に人間を殺すに充分な力を持つことになりました。今、農薬を扱うときは宇宙服のようなものを着ていないと、危険で仕事ができません。



有機と無農薬の関係
 森林を切り拓き、農薬が影響していない土地で野菜を栽培するのでない限り、いきなり純粋な有機農法を実施するのはリスクが大きいです。つまり土壌中には病原菌が蔓延していて、そこで野菜を栽培すると間違いなしに野菜は病気になります。

 この状況を改良するのに手っ取り早いのは、畑を60cm以上の深さまで掘って、その土を捨てて山から土壌菌が沢山含まれている土を取ってきて入れることです。
 もう一つの方法は畑を深く耕し、殺菌剤で完全に消毒した上で、殺菌剤の効果が消えた時点で有機肥料を鋤き込み、同時に優良菌を充分に散布し、散水して、菌の増殖をはかることです。
 普通は有機肥料を充分に鋤き込み、気長に土壌菌が増殖するのを待ちます。病気の野菜を見つけたら、躊躇無くそれを根から引き抜いて、燃やしてしまいます。有機肥料を施肥しながら、これを繰り返していると病気に罹る野菜は次第に少なくなってきます。

 病気になったからと言って、殺菌剤を使うと、せっかく増えかけた土壌菌も死んでしまうので、どんなことがあっても殺菌剤だけは使いません。土の中に有益な菌が増えると、不思議なことに病原菌は有益な菌に変身します。(これも淘汰の原理です) こうして病気は次第に少なくなって行きます。
 虫害はハウス方式を取らない限り、防げませんから、最小限の農薬をタイミングよく散布して被害を少なくします。(減農薬の考え方です)

 有機肥料が定着してくると、土壌菌が増えてきます。つまり有機肥料は土壌菌の食料としての役割が大きいのです。微生物も動物ですから、土の中を動き回るので、土の中に微小な隙間が出来て、空気と水が保たれるようになって、微生物はますます元気に動きます。こうして柔らかくなった土の中で、根は育ち、伸びて行きます。寿命がきた微生物は死んで有機肥料の仲間入りをします。微生物は細胞分裂して増殖しますから、死ぬ数より増える数の方が多いのです。

 根が伸びてくると有機肥料が提供する栄養分を元気に吸収し、幹を通じて葉に送ります。栄養たっぷりな葉は光合成を充分に行います。光合成で糖分を充分に作った野菜は、甘味を増やすだけでなく、葉や果実の表面につやつやしたコーティングを施します。(有機野菜がつやがあって、美味いのはこの為です)

 健康な野菜は虫を寄せ付けませんが、同時にコーティングを施すことで更なる虫からの攻撃を防ぎます。こうなると、化学殺虫剤は有機除虫剤に切り替えることができます。虫が嫌う匂いや味のある有機物を散布することで、虫を寄せ付けないようにするわけです。
以上、監修 白木氏(マレーシア) 

減農薬・減化学肥料に向けて
 上記で、土壌の面から農薬・化学肥料の役割や弊害などを解説しましたが、もう一つ植物自体の生長力を解説しておきます。視点を変えた解説になっています。

 農薬の使用目的は 「雑草除去の労力を軽減すること」、「害虫を防除すること」、「病害を防除すること」、「生長を調整すること」です。
 有機土壌では雑草はあまり生えてきません。害虫の発生も抑えられます。健全に生長すれば病害もほとんどなく、生長調整も必要なくなります。
 土壌を良くしたら、次に植物自体の健全化を進めましょう。

 健康な人が病気にならないのと同じで、植物自体も健康であれば病気に罹りにくくなります。健康な植物を作るには、細胞の組成成分を十分に補う事です。主に、水と肥料成分ですが、化学合成された肥料成分は土壌微生物への影響の他に、植物の生長にも若干影響します。例えば、窒素は化学合成された無機質の窒素よりも有機質の窒素の方が良好な生育を示します。

 病気に罹らず生長すれば、農薬を散布する必要性は大幅に減少します。
 ウィルス菌も植物が勝手に撥ね退けてくれますから殺菌剤を使ったりウィルス菌を持った害虫に目くじらを立てる必要もなくなります。

 化学肥料の使用目的は、植物の生長に必要な栄養を与えるためです。
 化学肥料の多投には弊害があります。土壌には残根などの有機物を分解し、窒素分として蓄積する働きがあります。通常は6ヶ月ほどかけて分解され、翌年度の作物に吸収されますが、土壌中の微生物相が崩れると6ヶ月で分解されなくなるのです。この状況で化学肥料を投入すると、確かに植物は生長しますが、栽培中に土壌微生物が分解した窒素分が余ってしまうことになります。土壌の状態は「窒素過多」となり、余剰分は河川へと流出するのです。河川、海洋汚染の原因はここにもあるのです。

   一番大事なのは、
減農薬・減化学肥料栽培に取り組もうという気持ち
です。        

 一人でも多くの方にご理解・ご賛同いただければ幸いです。



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